教員紹介
高知学習センターでは、所長と6名の客員教員が皆さんの学習をサポートします。学習方法やレポートの書き方等、学生さんの抱えている修学上の様々な問題についてお答えする学習相談や、学生・一般の方向けの「教養を深めるセミナー」を担当しています。お気軽にご参加ください。深見 公雄
海洋微生物生態学・海洋環境保全学
今年度から新しく客員教員を務めます深見公雄です。昨年度までは、当センターの所長を務めていましたが、今年の3月で任期満了となり、退任しました。私の専門は、「海洋微生物生態学」および「海洋環境保全学」で、海に生息する細菌類や原生動物、あるいは植物プランクトンなどの単細胞生物、つまり微生物群集の海洋における物質循環などに対する役割について研究してきました。微生物は肉眼では見えないため、あまり一般的にはなじみがないかも知れませんが、海の物質循環の上では、魚類等の目に見える生き物の役割はほとんど無視できるくらいで、微生物こそが大きな役割を担っています。
微生物はこの地球上の陸海空のあらゆる環境に多数生息しており、その中で病原菌の占める割合はごくごくわずかなこと、それどころか、いろんな有機物を分解・処理してくれるきわめて重要な生物であり、地球に生息するありとあらゆる生き物にとって無くてはならない存在です。しかし、海洋微生物生態学は、まだ学問が始まってからの歴史が浅く、まだまだ未知の事柄が多い分野で、近年、次々と驚くべき生態が明らかになっています。
セミナーや講演会等では、このような海洋微生物の生態について紹介し、その役割を利用した海洋環境の保全や修復についてもお話ししていきたいと思います。

藤田 佐和
がん看護学
令和7年度より講師を務めさせていただく高知県立大学大学院看護学研究科の藤田佐和と申します。土佐市出身です。二人にひとりが"がん"に罹患する時代、多様なニーズをもつがん患者さんやご家族の支援に特化し、高度な看護実践能力を有するがん看護専門看護師や教育・研究者を社会に送りだすことを使命と感じつつ、多くの可能性を秘めた大学院生とともに学んでいます。
研究テーマは、 "病気との折り合い"を中心においています。医療現場では、がん患者は脆弱性が高い存在であるとみなし、本人のもつ力に着目するという思考は乏しい時代がありました。しかし、患者は病気の体験において無力ではなく自身の本来の力を認識できなくなっているだけで、医療者がその力を捉えることによりがん患者への看護の新たな視点が見いだせるのではないかと考え、「折り合いをつける力」の研究をMasteryの理論を基盤に取り組んできました。
講義の中では、現在のがん医療・看護の課題を取り上げ、患者の持つ力に着眼して、治療・療養生活過程について考えていきます。がんや治らない病気と向き合っている方々が感じたり、考えてていることや、価値観や信念を大事にして、その人らしい充実した生活を送るために、日常生活の中に病気をうまく組み込んでいく方策について、皆様とともに学びを深めていくことができればうれしく思います。よろしくお願いいたします。

矢野 宏光
スポーツ心理学・運動心理学・健康心理学
高知大学教育学部の保健体育教育コースに所属しています。学問分野の専門は、スポーツ心理学、運動心理学、健康心理学で、実技の専門は剣道(剣道教士七段)です。これまで、一貫して「心と身体のつながり」に焦点をあてた研究を行ってきました。
近年はオリンピック代表選手や候補選手のメンタルサポートに従事しています。東京2020オリンピックでは、サポートしていた選手が見事に金メダルを獲得し、感動で心が震えたのを思い出します。緊迫した場面で発揮されるオリンピアンの心の強さ、それは"努力"によって鍛えあげられたものであることはあまり知られていません。
試合場面で自己のパフォーマンスを十分に発揮するために、どのような心理的スキルが必要で、それをどのような方法でトレーニングし、身に付けていくのか、とても興味深いところです。実はこの方法論、トップアスリートだけにあてはまるのではなく、一般人にも十分に適用されるのです。ここ一番で自分の実力を十分に発揮させたい、日々の生活をもっと前向きに生きたい、という一般の人達の悩みを解消するための方法論としても効果的なのです。
講義では、運動パフォーマンスや心身の健康度を高めるために必要な心理学の理論とその実践について解説していきます。スポーツや運動、健康と『心』の関係性に興味のある皆さんとともに、学びを深めていくことができればたいへんうれしく思います。どうぞよろしくお願いいたします。

大槻 知史
コミュニティ防災論・防災教育論
高知大学 地域協働学部/防災推進センター 危機管理分野の大槻と申します。
南海トラフ地震や豪雨災害など、いろんな災害への対策が必要だとは「わかっているけど」、なかなか備えをするのは面倒くさいですよね(にんげんだもの)。
そんなわたしたち人間の当たり前の特徴を愛しながら、自分や家族、地区の状況やリスクに合わせた防災を進めていくにはどうすればいいか。そして「防災」を単に災害から生命を守るためでなく、日々の暮らしを楽しく、地域を元気にし、子どもや大人の成長にもつながるにはどうしたらいいのか、そんなことを研究テーマにしています。
いわゆる専門家の知識だけでなく、皆さんの人生経験で育まれた知恵を活かしてこそ、防災は現実的で役に立つものになります。双方向の関わりを大切にして、皆さんと一緒に暮らしに根ざした楽しい防災を作り上げていければと考えています。

田中 裕也
日本近代・現代文学
高知県立大学文化学部で日本近代・現代文学を担当しています。主に三島由紀夫を中心とした戦後文学と社会との関係性を研究しています。
文学作品を読むということは何かとは一概には言えませんが、ひとまずは登場人物たちの人生をとおして喜怒哀楽などの感情を追体験したり、さまざまな教訓を得たりすることと言えるでしょう。そうした作品を読む「楽しみ」は、私も含め多くの読み手にとって代えがたいものがあります。しかしみなさんは小説を読むなかで、釈然としない場面に出くわしたことはないでしょうか。またカミュ「異邦人」のムルソーのように自分の意思とは全く異なるところで殺人を犯してしまい極悪な犯罪者として裁かれていく小説や、三島由紀夫「豊饒の海」四部作のように「輪廻転生」した人物に焦点を当てながらも最後は全てを否定していく小説などのように、決して単純に「楽しい」とは言えない作品も多くあります。
どうやらそういった作品たちは、単純にその「物語」のなかだけで完結していないようなのです。セミナーでは少し「読む」訓練が必要な作品の「楽しさ」を知ってもらいたいと思っています。

奥村 知世
地球生命科学
高知大学物部キャンパスにある海洋コア国際研究所の奥村知世と申します。
私の所属する海洋コア国際研究所は、海底から採取された筒状の堆積物を保管・管理・研究する、世界三大研究拠点の一つです。多種多様な分析機器を備え、地球環境や気候変動に関する研究が行われています。普段は、この研究所で自身の研究を進めるとともに、農林海洋科学部において地球科学関連の授業を担当し、学生の研究指導も行っています。
私の研究対象は、主に炭酸カルシウム(CaCO₃)から構成される生体鉱物(生物が作り出す鉱物)や石灰岩で、それらに刻まれた生命活動や環境変遷の歴史を読み解くことをテーマに研究を進めています。炭酸カルシウムは、最も身近な生体鉱物であり、水中の炭酸成分や大気中の二酸化炭素の挙動と密接に関わることから、地球上の生命活動やその進化の歴史、環境変遷を記録する重要な鉱物です。
高知には、日本三大鍾乳洞の一つである龍河洞があり、国内有数の石灰岩地帯が広がっています。また、世界的にも評価される宝石サンゴの産地としても知られ、私にとって非常に魅力的な研究フィールドです。講義では、こうした身近な対象を紹介しながら、石灰岩に刻まれた壮大な時空間スケールの物語を一緒に読み解き、地球科学や生命科学への理解を深めていければと思っております。
どうぞよろしくお願いいたします。