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放送大学
愛知学習センター

所長ご挨拶

 2018年4月1日付でセンター所長を拝命することになりました。

 放送大学とは、思えばけっこう長いお付き合いです。10年近く放送大学の客員教員を勤めた経験があります。愛知学習センターで、面接授業を担当したこともありますが、その時には、本務校である名古屋大学の学生と一味もふた味も違う動機づけの高さに驚いたことを思い出します。

 私は、子どもの社会的情動的発達の研究をしております。そこでは、子どもの側の視点だけでなく、親の視点からの研究が必要になります。自分自身の親としての経験や多くの親から得た具体の知識などは、20歳前後の学生には現実味がないようで、なかなか共感的に理解してもらえません。それに対して、放送大学で学ばれているみなさんの多くは、さまざまな経験をされており、学ぶ内容と皆さんご自身の具体の経験がいろいろな形で相互作用しているからこそ、授業への「食いつき」が格段違っていたのではないかと思っていました。

 最近、大学に対して使える知識を教えなさいという要求が強まっていますが、単に実用的な知識であれば、大学にくることもありません。一方で、提供する知識にいろいろなレベルでリアリティがないと、生きた学習とはなりません。リアリティは授業内容だけでなく、学習者の動機づけとも関わります。その点、放送大学で学ばれている皆さんは、学習内容を自らの経験と重ね、授業にリアリティを生み出すようなアクティブな学習者なのだと思います。みなさんのアクティブ学習に、少しでもお役にたてるように心がけたいと思っています。

 朝日新聞の1月27日の朝刊に、アメリカの著名なコラムニストであるトーマス・フリードマンによるNYタイムズのコラムの抄訳が掲載されました。タイトルは、「AIが労働者に迫る変革」というものです。そのコラムの中で、IBMの最高経営責任者の談話が紹介されています。それは、放送大学の未来予想図の1つになり得るのではないかと思いますので、簡単に紹介することにします。IBMの最高責任者によれば、すべての仕事に何らかの技術が必要となるから、幼稚園から高校までの教育はもとより、「大人の再教育、生涯学習の仕組み」がさらに重要だと述べています。さらに、「AIでは補えない仕事もある。だからこそ、人間にしか発揮できないスキルが重要になる」というのです。単にコンピュータやインターネット、AIを使いこなすだけではなく、それらにとって代わられないような「力」を自ら身につけていくことが必要なようです。

 人間にしか発揮できないスキルとはどのようなものでしょうか?私は、教養はそのうちの一つだと考えています。もちろん、教養とは、単なる知識の広さとか深さではありません。それは、まさしく人間としての力であり、それを身につけようとする態度を指します。教養を身につけるべく修養することこそが人間としての力なのです。

 教養は、高校を卒業したら大学に進むのがふつうだと考えている学生や就職のために大学にきたという学生には縁遠いものかもしれません。自ら主体的に学習の機会を求めて入学される皆さんこそ、本当の教養により近い位置におられるのではないかと思います。そして、本当の教養人は、社会のダイナミクスに応じて変化するという柔軟性とともに、価値あるもの、意味あるものを自ら創造していく力も持っているはずです。

 放送大学が、そのような人間的力を皆さんが修養し、本当の教養を身につけるための場になることを心から願っています。と同時に、皆さんが主体的に学び、創造的に生きていくことに少しでも役に立てたら、教育者の端くれとしてこれ以上の喜びはありません。

愛知学習センター所長
氏家 達夫

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