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鳥取学習センター

鳥取学習センター・セミナー「乾燥地を活かす食料生産技術」(2)

「地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)」事業による「持続的食料生産のための乾燥地に適応した露地栽培結合型アクアポニックスの開発」では、メキシコ合衆国南バハ・カリフォルニア州のラパス市近郊において、塩分を含む水を効率的に使用し、環境保全型の持続的食料生産を行うための技術開発を行うことを研究目的としました。技術開発の対象としたのは、養殖と農業を組合せたアクアポニックスシステムです。

アクアポニックスは、魚の養殖と野菜の水耕栽培を水の循環的利用によって結合する技術として、世界中で広く利用されています。これに対してプロジェクトで新技術として取り上げたアクアポニックスでは、養殖と水耕栽培に加えて野菜の露地(土耕)栽培を連結させ、塩分を含む灌漑用の地下水を養殖、水耕栽培、土耕栽培の順序で使用し、残った水を再び地下に戻す方式をとります。プロジェクトでは、このような水利用の方式を核とした新しい生産技術に対し、「露地栽培結合型アクアポニックス」の名称を使うこととしました。

養殖では、閉鎖型水槽を用いて水を循環利用するため、既存のアクアポニックスに比べて使用する水の量を削減することができます。さらに、水槽内で魚を飼育する養殖技術には水質汚濁の危険性が伴いますが、水耕栽培、土耕栽培と連結させることにより、水中に含まれる養殖の残渣を野菜栽培で利用してその危険性を低下させることができます。また一般的に、農業の野菜生産ではもっぱら水を消費するだけで水資源の涵養に対する貢献度は低いのが実情です。しかし、露地栽培結合型アクアポニックスでは、水耕栽培において好塩性を備えた野菜を栽培することにより、水中の塩類濃度を低下させる効果を発揮することが可能です。地下水の塩類濃度を低下させ、さらに養殖水の汚濁を軽減させることができれば、水質浄化に対して効果を発揮することができます。

技術開発においては、水耕栽培で除塩を行うものの、そこからの排水には土耕栽培用としてはなお高い濃度の塩分が含まれているため、養殖室と水耕栽培室において蒸発散によって大気中に放出される水分を除湿機で回収し、土耕栽培用の排水と混合して塩分濃度を低下させる方法をとっています。また、養殖のための水槽水の循環、そして、養殖から水耕栽培、土耕栽培の順に送水するために必要とされるエネルギーのすべてを太陽光発電によって賄うこととしました。

その理由は、半乾燥地の南バハ・カリフォルニア州には潤沢に降り注ぐ太陽光線があり、また、電気の通っていない場所が少なからず残されていることによります。太陽光発電による自然エネルギーを活用し、塩分を含む地下水を有効利用して安定した食料生産技術を確立することができれば、露地栽培結合型アクアポニックスは州内のみならず乾燥地に適合した技術として、幅広い地域に普及し社会貢献を果たすことが可能になります。

以上のような狙いに沿って、水資源の制約等から食料生産の機能が劣るとされてきた乾燥地において、アクアポニックスに対する新しいエネルギーと水利用技術の開発を軸にしながら、環境保全型の持続的な食料生産技術の開発に取り組むのが本プロジェクトの研究目的です(図3)。

次回の連載では、露地栽培結合型アクアポニックスの実証試験について紹介します。

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