ホームページ

文字サイズ
放送大学
鳥取学習センター

鳥取学習センター・セミナー「乾燥地を活かす食料生産技術」(1)

筆者は、2020年1月に「乾燥地を活かす食料生産技術」のタイトルで放送大学鳥取学習センター・2019年度第2学期のセミナーを担当しました。農学分野の専門的な内容となりますが、できるだけ平易な解説となるように努めて概要を紹介させて頂きます。なお、解説にはそれなりの文量が必要ですので、3回に分割して掲載することをお許し下さい。

 世界の陸地の約4割は乾燥地によって占められ、そこには世界人口の約三分の一が居住していることが紹介されています(北村義信著『乾燥地の水をめぐる知識とノウハウ』技報堂出版、2016年、p.2)。乾燥地にある国々の多くは開発途上国に属していて、これらの国々での社会経済の発展と安定が世界の人々にとって共通の課題となっています。

 乾燥地は厳しい自然条件下にあり、とりわけ水資源が極端に乏しい状況に置かれています。そのため、水資源の有効利用と涵養(かんよう)が重要な社会問題となっています。農業分野においても限られた水を有効に利用して、水資源を枯渇させることなく養い育てることのできる、持続可能な土地利用技術を確立することが地球規模での課題となっています。

 鳥取大学農学部では、日本国際協力機構(JICA)と日本科学技術振興機構(JST)による「地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)」の事業予算を獲得し、2015年から5ヶ年の計画で半乾燥地域にあるメキシコ合衆国南バハ・カリフォルニア州においてプロジェクトを実施しています(図1)。研究課題名を「持続的食料生産のための乾燥地に適応した露地栽培結合型アクアポニックスの開発」と言います。メキシコ北西部生物学研究所(CIBNOR)との国際共同研究として取り組んでおり、日本側は鳥取大学と東京海洋大学が構成大学となっています。

 南バハ・カリフォルニアの州都であるラパス市の年間平均降水量は160ミリで、9月のハリケーンが襲来する時期を除けば、河川に水が流れることは滅多にありません(図2)。生活用水はもとより、主要産業である観光や農業に使用する水は、長い時間をかけて地下の帯水層に蓄えられた地下水に依存しています。水は限られた貴重な資源であり、枯渇すれば産業は成り立たず、社会の存続さえ危うくなってしまいます。実際に農業分野では、水の収奪的な利用によって農地としての利用が困難となった地区が存在します。乾燥気候による州内の自然環境を反映して地下水の塩分濃度が総体的に高い状態にあり、利用可能な水量の維持と同時に水質悪化の防止が大きな課題となっています。農業はとりわけ水の消費量が大きい産業であるだけに、厳しい水利用対策が求められています。

 鳥取大学農学部では、乾燥地の厳しい自然環境下における効率的な水利用技術の開発を柱とする持続可能な環境保全型農業の確立を目的にして、1990年代から南バハ・カリフォルニア州においてJICA関係事業を重ねて実施してきており、今回が3回目の大型プロジェクトとなります。筆者は、農業経営学の研究専門家として2回目のプロジェクトから参加しています。連載の次回には、プロジェクト研究の具体的内容について紹介することにします。

20200201-1.png20200201-2.png

一覧ページへ戻る

ページの先頭へページの先頭へ